韓国にみるIT普及のポイント |
4コンテンツビジネスの確立多くの人がインターネットを使い、その中心が娯楽であるという韓国の状況は、オンラインゲームや動画配信などのコンテンツビジネスにとって良い環境である。しかし、多くを無料で提供していたインターネット関連業者は苦しい状態にあった。それが最近、念願の「コンテンツの有料化」に成功しつつあり、収益を上げることのできるビジネスとして確立するようになった。立ち上がりの時期であるため、統計データはないが、個別の成功例としては以下のようなものがある。
4-1 携帯小額決済コンテンツの有料化が成功した基盤には、韓国独自の決済方式「携帯小口決済」が上げられる。携帯小口決済の仕組みは次のようになっている。図表 6 携帯小口決済の仕組み ![]()
(手数料は利用者が払う料金を100とすると、携帯電話会社2.5〜5、料金回収代行会社10、コンテンツプロバイダ85〜87.5) この決済方法は2000年にサービス開始されたが、インターネットユーザに指示され、クレジットカード決済と並ぶ主要な決済方法になっている。図表 7 (韓国での)有料コンテンツの決済方式
携帯小口決済がここまで多く利用されるようになったのには、いくつかの理由が考えられる。携帯小口決済を他の決済方法と比較すると次のようになる。
そして、携帯小口決済は、セキュリティも高いといえる。インターネットの世界だけでセキュリティを保つのは難しく、パスワードなどは管理が難しい上、盗まれてもすぐにわからず、利用者は不安を感じる。しかし、携帯電話を併用することにより、不安心理を減らすことができる。携帯電話を盗まれないように注意することはできるし、日常使うものなので盗まれればすぐに気づく。 このように携帯小口決済という、有料コンテンツの決済に適した方式が普及した韓国に対し、日本では、そのような決済手段は確立されていない。日本でインターネットを利用し、製品やサービスを購入した際の決済方法は以下のようになっている。 図表9 (日本での)製品・サービス購入の際に利用した決済方法(複数回答)N=739
このアンケートは、有料コンテンツの購入だけでなく、オンラインショッピングなど商品の購入も含まれているので、代引きなどの比率が高くなっている。有料コンテンツの決済にはインターネット専用銀行引落し、プロバイダなどの会員制決済などが期待されているが、韓国の携帯小口決済のように普及するかは不明である。 韓国では国民全員に「住民登録番号」が振られているので個人を特定しやすいことも携帯小口決済が可能となった一因ではある。しかし、同様の方法は、i-modeやj-skyなどの有料サイトの課金システムを使えば十分実現可能と思われる。携帯電話会社に問い合わせたが、「このような仕組みは検討してはいるが実現はしていない」ということであった。携帯電話会社にとってもメリットがあると思われるが、積極的な動きはないようである。 携帯小口決済サービスと同じである必要はないが、日本でコンテンツビジネスが確立するには、適した決済手段が必要である。 4-2利用者の意識変化コンテンツの有料化については、利用者の意識変化についても注目に値する。 図表10 (韓国での)コンテンツの有料化について
韓国での意識調査は上記のように、有料化を容認しているユーザが半数となっている。半数も容認しているとも言えるし、半数しか容認してないとも言える。しかし、他国と比べると圧倒的に高い。例えばアメリカの調査会社Jupiter Media Metrixによる調査では、アメリカのインターネット利用成人の70%もが「コンテンツに金を払うのは理解できない」という調査結果が出ている。(http://japan.internet.com/wmnews/20020319/10.html) 韓国でも利用者がはじめから有料化を容認していたのではなく、ここまでくるのに時間はかかった。多くのサイトが有料化を試みてはユーザ離れを起こすということを繰り返してきた。そのような状況で、コミュニティサイトSAYCLUB(http://www.sayclub.com/)は有料化への変更をうまく乗り切ることができた例として良く挙げられる。同サイトはアバター(自分の分身となるキャラクター)を使ったコミュニティサイトであるが、有料会員制とすると利用者が逃げてしまうので、利用そのものは無料だが、アバターのコスチュームや登場音などを有料化するという工夫で収益基盤を確立することができた。 いくつかのサイトがこのように工夫をすることで有料化が認められるようになると、その後、多くのサイトが次々と有料化され始めた。そうした状況で、地上波TV放送局SBSは放送終了した番組を有料化したが、これについては特に工夫があるというよりも、ユーザが有料化に慣れたので受入れられたという面が強いようである。 韓国インターネット情報センターの「インターネット利用者数および利用形態調査」では、有料コンテンツを購入した経験のあるユーザは15%以下と高くなく、まだまだこれからだが、明らかに日本よりは進んでいる。日本で利用者が有料コンテンツを容認するようになるには、これから多くのサイトが有料化の失敗を繰り返す必要があるだろう。最新システムを導入することは短期間でできるが、人々の認識は変えるのは時間がかかる。日韓のこの差はしばらく埋まらず、韓国企業が有料コンテンツ配信でこれから培うノウハウは、日本でコンテンツ有料化が容認されたときに、大きな脅威となっているかもしれない。 |
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2003.4.1更新 |